買取再販の「不動産取得税」の軽減措置!“最大1200万円”控除の手続きを解説(宅地建物取引業者向け)

「買取再販不動産を購入しば場合は、不動産取得税が安くなります!」

今回はマンションの買取再販のケースを詳しく解説していきます。

実は、全国宅地建物取引業協会連合会の調査報告書によると、ほとんど利用されていない・・・

買取再販事業者が中古住宅を買い取り、一定のリフォーム後、消費者に販売する場合に、中古住宅の築年月日に応じて買取再販事業者の取得に係る不動産取得税を軽減する特例措置について、過去1年間における、御社が本特例措置を利用した案件数をお教えください という質問を行った。
その結果、 「0件」という回答が最も多く62.8%、また「無回答」も13.8%あった。
令和4年度不動産税制等に係る消費者実態調査:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会より

買取再販に係る不動産取得税の特例措置の手続きの流れ

買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置
買取再販に係る消費者の負担を軽減し、消費者がより多くの選択肢から良質な既存住宅を、より低価格で購入できるようにするための制度です。

平成27年度税制改正により、宅地建物取引業者が既存住宅を取得し、住宅性能の一定の向上を図るための改修工事を行った後、住宅を個人の自己居住用住宅として譲渡する場合、宅地建物取引業者による当該住宅の取得に課される不動産取得税について、当該税額から当該住宅が新築されていた時において課税標準額から控除することとされていた額(下記)に税率を乗じて得た額を減額する特例措置が創設されました。

築年月日控除額(万円)
平成9年4月1日~1200万円
平成元年4月1日~平成9年3月31日1000万円
昭和60年7月1日~平成元年3月31日450万円
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日420万円
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日350万円
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日230万円
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日150万円
昭和29年1月1日~昭和38年12月31日100万円

さらに、平成30年度税制改正により、一定の場合(対象住宅が「安心R住宅」である場合又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入する場合)において、宅地建物取引業者による当該住宅の敷地の用に供する土地の取得に課される不動産取得税について、次の①又は②のいずれか高い金額を税額から減額する特例措置が講じられました。(適用期限:令和5年3月31日)

①45,000円
②土地1㎡あたり評価額×1/2×住宅の床面積の2倍(上限200㎡)×3%

※国交省のホームページより
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000024.html


買取再販のマンションで本特例措置の適用を受けるための要件及び手続の流れは以下の通りです。

具体的な要件

当該個人の居住の用に供される床面積50㎡以上240㎡以下の家屋であること
耐震性に関して、以下のいずれかに該当する家屋であること

築後25年以内(耐火建築物以外は20年以内)の家屋
一定の耐震基準を満たしていることが次のいずれかの書類により証明されたもの
①建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関又は住宅瑕疵担保責任保険法人が証する書類(耐震基準適合証明書)
②住宅性能評価書の写し(耐震等級が1、2又は3であるものに限る。)
③既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入していることを証する書類(保険証券の写し又は保険付保証明書)
地建物取引業者(不動産や建築会社)から当該家屋を取得したこと
宅地建物取引業者が住宅を取得してから、リフォーム工事を行って再販売するまでの期間が2年以内であること
取得の時において、新築された日から起算して10年を経過した家屋であること
建物価格に占めるリフォーム工事の総額(次項(1)~(7)に該当する工事に要した費用の総額)の割合が20% (リフォーム工事の総額が300万円を超える場合には300万円以上)であること

(1)増築、改築、建築基準法上の大規模な修繕又は模様替
(2)マンションの場合で、床または階段・間仕切り壁・主要構造部である壁のいずれかのものの過半について行う修繕又は模様替
(3)居室・調理室・浴室・便所・その他の室(洗面所・納戸・玄関・廊下)のいずれか)の床又は壁の全部についての修繕・模様替
(4)一定の耐震基準に適合させるための修繕又は模様替
(5)バリアフリー改修工事(以下①~⑧のいずれかの工事)
①車いすで移動するための通路又は出入口の拡幅
②階段の勾配の緩和
③浴室の改良(以下のいずれかに該当するもののみ)
・入浴又はその介助を容易に行うために浴室の床面積を増加させる工事
・浴槽をまたぎ高さの低いものに取り替える工事
・固定式の移乗台、踏み台その他の高齢者等の浴槽の出入りを容易にする設備を設置する工事
・高齢者等の身体の洗浄を容易にする水栓器具を設置し又は同器具に取り替える工事
④便所の改良(以下のいずれかに該当するもののみ)
・排泄又はその介助を容易に行うために便所の床面積を増加させる工事
・便器を座便式のものに取り替える工事
・座便式の便器の座高を高くする工事
⑤手すりの取付け
⑥段差の解消
⑦出入口の戸の改良(以下のいずれかに該当するもののみ)
・開戸を引戸、折戸等に取り替える工事
・開戸のドアノブをレバーハンドル等に取り替える工事
・戸に戸車その他の戸の開閉を容易にする器具を設置する工事
⑧滑りにくい床材料への取り替え
(6)省エネ改修工事
(改修部位の省エネ性能がいずれも平成28年基準以上となる工事で、以下の①又は①の工事と併せて行う②から④の工事。地域区分毎に要件が異なる。)
①以下のいずれかに該当する工事
-全ての居室の全ての窓の断熱性を高める工事又は日射遮蔽性を高める工事
-改修後の住宅全体の省エネ性能が確保される場合((ⅰ)断熱等性能等級4又は(ⅱ)一次エネルギー消費量等級4以上及び断熱等性能等級3)に限り、居室の窓の断熱性を高める工事又は日射遮蔽性を高める工事
②天井及び屋根の断熱改修
③壁の断熱改修
④床の断熱改修
(7)給水管、排水管又は雨水の浸入を防止する部分に係る工事
当該家屋について、以下のいずれかに該当するリフォーム工事が行われたこと
- 2頁(1)~(6)に該当するリフォーム工事を行い、工事の合計額が100万円を超えること
- 50万円を超える、次頁(4)、(5)、(6)のいずれかに該当する工事を行うこと
- 50万円を超える、次頁(7)に該当する工事を行い、給水管、排水管又は雨水の浸入を防止する部分の瑕疵を担保する既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入すること

上記の要件を満たしているかどうかを確認するようになっています。

では、具体的に特例措置適用要件と必要となる手続きを確認しましょう!

① 特例措置適用要件をチェック! 

当該個人の居住の用に供される床面積50㎡以上240㎡以下の家屋であること
マンションの場合は、最も多い床面積が75㎡ですので、ファミリータイプであれば、ほとんどの物件が、該当します。
耐震性に関して、以下のいずれかに該当する家屋であること
マンションの場合は、①耐震基準適合証明書がもっとも取得しやすいです。
※不動産取得税の減額を受けるには、「1981年(昭和57)1月1日以降の築」であれば耐震基準適合証明書の提出は不要になります。
地建物取引業者(不動産や建築会社)から当該家屋を取得したこと
個人からは購入しないでください。買取再販業者や宅建取引業者からの購入をお願いします。
宅地建物取引業者が住宅を取得してから、リフォーム工事を行って再販売するまでの期間が2年以内であること
リフォーム・リノベーション工事期間も含めて2年以内です。通常、買取再販業者は工事期間40日、販売期間50日の90日サイクルで販売していますので、ほとんどの場合、該当します。
取得の時において、新築された日から起算して10年を経過した家屋であること
マンション築年数を確認してくださいね。買取再販のマンションはおおむね10年以上経過していることが多いですので該当するとおもいます。
建物価格に占めるリフォーム工事の総額(1)~(7)に該当する工事に要した費用の総額)の割合が20% (リフォーム工事の金額が300万円以上)であること
マンションの場合は(2)と(7)に該当します。

工事に要した費用の総額が、マンションの個人への売買価格(税込み建物価格)の20%(リフォーム工事の金額が300万円を超える場合には300万円)以上で、100万円(税込)を超える工事であること。

通常マンションリフォーム・リノベーション工事はでは、おおむね
・リノベーション工事450万(解体・間仕切り壁・床・水回り設備)
・給排水工事45万(給排水更新)
の模様替え(フルリノベーション)で、300万以上になるケースが多いです。

② 申告までに必要な書類 

1. 既存住宅取得時
宅地建物取引業者が、不動産取得税申告書及び不動産取得税に係る徴収猶予申請書又は還付申請書を都道府県に提出します。
2.工事実施時
宅地建物取引業者が、増改築等工事証明書の発行を建築士等(※)に申請する。
(※)証明書を発行できるのは建築士事務所に,「建築士」「指定確認検査機関」「登録住宅性能評価機関」「住宅瑕疵担保責任保険法人」など
3.工事完了後
宅地建物取引業者が、建築士等から増改築等工事証明書を入手します。
4.宅地建物取引業者から買主への既存住宅の譲渡後
宅地建物取引業者が、買主の住民票の写しを入手します。
5.登記申請時
宅地建物取引業者が、課している要件を満たした工事等を実施していることを確認できる書類を提出することで、本特例措置の適用を受けることができます。

宅地建物取引業者が都道府県へ下記の書類を揃えて提出します。

都道府県申請時の流れ

1. 中古マンション取得時
宅地建物取引業者が、不動産取得税申告書及び不動産取得税に係る徴収猶予申請書又は還付申請書を都道府県に提出する。

2.工事実施時
宅地建物取引業者が、増改築等工事証明書の発行を建築士等(注)に申請する。
(注) 建築士等:建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人

3.工事完了後
・宅地建物取引業者が、建築士等から増改築等工事証明書を入手する。
・50万円を超える1頁(7)に該当する工事が行われた場合は、宅地建物取引業者が、既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入し、既存住宅売買瑕疵担保責任保険の保険証券又は保険付保証明書を入手する。

4.宅地建物取引業者から買主への既存住宅の譲渡後
宅地建物取引業者が、買主の住民票の写しを入手する。

5.登記申請時
宅地建物取引業者が、課している要件(1,2頁に記載の①~⑨)を満たした工事等を実施していることを確認できる書類(※)を提出することで、本特例措置の適用を受けることができる。

本特例措置を受けるために必要となる書類

  • 登記事項証明書
  • 宅地建物取引業者が個人に譲渡する際の当該住宅の売買契約書又は売渡証書等
  • 登記事項証明書
  • 宅地建物取引業者が個人に譲渡する際の当該住宅の売買契約書又は売渡証書等
  • 当該住宅の住所が記載された買主の住民票の写し
  • 一定の耐震基準を満たしていることを証明する書類(昭和57年1月1日以降に新築された家屋は除く)
  • 増改築等工事証明書
  • 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類(※第7号工事が行われた場合)

増改築等工事証明書の記入の方法

増改築等工事証明書は、国土交通省通達において、その様式が定められています。登録税や期間によって様式が異なります(特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減の特例及び改修工事がされた住宅の不動産取得税の軽減の特例用)をお使いください。
国土交通省のホームページよりダウンロードしてご記入をお願いします。
※書類はWordファイルとなっています。

また、証明書を発行できるのは、以下の4者(機関・法人になります。

1.建築士事務所登録をしている事務所に属する建築士
工事業者が建築事務所登録をしていない場合には、別途、建築士に依頼する必要があります。
2.指定確認検査機関
国土交通大臣指定(日本全域)
(国交第1号)一般財団法人日本建築センター
(国交第5号)本ERI株式会社
(国交第14号)株式会社住宅性能評価センター
(国交第11号)株式会社都市居住評価センター
(国交第13号)ビューローベリタスジャパン株式会社
(国交第15号)株式会社国際確認検査センター
(国交第25号)日本建物評価機構株式会社
(国交第17号)日本建築検査協会株式会社
(国交第27号)株式会社東京建築検査機構
(国交第28号)株式会社J建築検査センター
(国交第12号)一般財団法人ベターリビング
3.登録住宅性能評価機関
国土交通大臣1 一般財団法人ベターリビング
国土交通大臣2 一般財団法人日本建築センター
国土交通大臣4 ハウスプラス住宅保証株式会社
国土交通大臣5 日本ERI株式会社
国土交通大臣6 株式会社住宅性能評価センター
国土交通大臣7 株式会社日本住宅保証検査機構
国土交通大臣8 株式会社東日本住宅評価センター
国土交通大臣10 株式会社西日本住宅評価センター
国土交通大臣11 一般財団法人日本建築総合試験所
国土交通大臣13 株式会社都市居住評価センター
国土交通大臣15 関西住宅品質保証株式会社
国土交通大臣17 富士建築センター株式会社
国土交通大臣18 株式会社ハウスジーメン
国土交通大臣21 ビューローベリタスジャパン株式会社
国土交通大臣23 一般財団法人住宅金融普及協会
国土交通大臣25 株式会社国際確認検査センター
国土交通大臣26 株式会社ジェイ・イー・サポート
国土交通大臣31 株式会社東京建築検査機構
国土交通大臣32 株式会社グッド・アイズ建築検査機構
国土交通大臣33 SBIアーキクオリティ株式会社
国土交通大臣36 アウェイ建築評価ネット株式会社
国土交通大臣37 株式会社確認サービス
国土交通大臣38 日本建築検査協会株式会社
国土交通大臣41 株式会社確認検査機構トラスト
国土交通大臣44 株式会社住宅あんしん保証
国土交通大臣47 にほんのいえ評価センター株式会社
国土交通大臣49 株式会社J建築検査センター
国土交通大臣50 一般財団法人静岡県建築住宅まちづくりセンター

また、北海道、東北、関東、北陸、近畿、中国、九州、沖縄の各地域の地方整備局でも可能です。
4.住宅瑕疵担保責任保険法人
株式会社住宅あんしん保証
 〒104-0031 東京都中央区京橋1-6-1 三井住友海上テプコビル6階
 電話番号:03-3562-8120
住宅保証機構株式会社
 〒105-0011 東京都港区芝公園3-1-38 芝公園三丁目ビル
 電話番号:03-6435-8870
株式会社日本住宅保証検査機構
 〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-6ランディック神田ビル
 電話番号:03-6861-9210
株式会社ハウスジーメン
 〒105-0003 東京都港区西新橋3-7-1 ランディック第2新橋ビル8階
 電話番号:03-5408-8486
ハウスプラス住宅保証株式会社
 〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー18階
 電話番号:03-4531-7200
(一財)住宅保証支援機構
 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6-67
 電話番号:03-6280-7241

増改築等工事証明書を発行するために必要な書類

最低限、必要となる証明書
  • 増改築等工事証明書
  • 改修工事を行った住宅の登記事項証明書等
  • 工事請負契約書の写し(左記書類がない場合は、領収書及び工事前後の写真で確認)
  • 設計図書その他設計に関する書類


証明書の様式は、国土交通省のホームページよりダウンロードできます。

記入例はこちらからダウンロード可能です。(第7号工事を行った場合には、住宅瑕疵担保責任保険等の書類が必要になります)

買取再販に係る不動産取得税の特例措置の手続きは、マンションの購入時に都道府県に還付の申請手続きを行う必要がありますので、なかなか、活用されないのが現状ではないでしょうか?

また、増改築等工事証明書においても、建築士や指定機関に発行してもらうには、時間も費用もかかるのも、理由のひとつだと考えられます。

マンション購入時に申請しなければ、活用できませんので、工事完了後や販売開始時にも減税が受けられるようになればよいのですが・・・今後の改善を期待したいと思います。

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